最近ニュースで、マダニなどから感染する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が日本国内で初めて人から人へ感染したというニュースがありました。
記事⇒【マダニの媒介による感染症SFTS ヒトからヒトへ感染 国内初確認】
これは空気感染ではなく、感染した患者の体液によって担当医師が感染したという内容なので、感染経路は体液を媒介とした直接感染ということになります。
感染した担当医師は若かったこともあり、比較的軽度の症状で回復に至りましたが依然として治療方法がないウイルス感染ですので予防方法が大切です。
SFTSの感染源とされるマダニはちょうど3月位から活発に活動をはじめ、ペットや人間に寄生しますので予防方法をしっかり学んで、安全なお散歩を心がけましょう!
1.マダニはどこから感染するの?
まずSFTSという感染症は、SFTSウイルスを持ったマダニが人に寄生することで発症する感染症です。
そのため、予防方法はマダニに嚙まれないようにすることが最も効果的な方法になります!
感染源となるマダニの生態について知ることで、予防方法も理解できますので、まずはマダニという生き物について解説します。
1-1.マダニの成長サイクル
マダニの活動期は3月~11月と言われており、特に春~夏にかけてが特に活発に活動する時期になります。
マダニは吸血と脱皮を繰り返しながら成長する寄生虫です。
≪マダニの成長サイクル≫
- 卵…1週間~2カ月くらいで孵化します。
- 幼ダニ(サイズ1mm)…生き物に寄生し2~5日間吸血した後に落下して脱皮します。
- 若ダニ(サイズ5mm)…寄生し3~7日間吸血した後に落下して脱皮します。
- 成ダニ(サイズ1cm)…寄生し数日~2カ月間吸血を行い、メスの場合はこの時に交尾と産卵を行います。
1-2.マダニの感染経路は草むら
マダニがどこから感染するのかというと、一番気を付けるのは草むらの中です。
マダニが活動期に入ると葉っぱの裏や先端に潜み、生き物の体温や二酸化炭素に反応して対象に感染する仕組みです。
そのため犬・猫が外を歩く際に草むらに入ると、マダニがペットに感染するというケースが圧倒的に多いです。
そのため具体的な予防方法としては
≪マダニの予防方法≫
- 犬・猫を草むらに入れない
- マダニの予防接種を行う
- 人間も草むらを歩かない
- 草むらで作業するときは長靴・長ズボンを着用する
- ズボンや靴にダニの忌避剤を使用するとなお良い
などの注意が必要です。
ペットがマダニに感染して、その後飼い主さんに感染するという可能性がありますので、まずはペットのマダニ感染に気を付けてあげましょう。
1-3.マダニの予防薬
犬・猫をマダニのリスクから守るためには、動物病院での予防薬が重要です。
一般的によく使用されている予防薬は以下の3つがあります。
(1)フロントラインプラス
(2)フロントライン ジェネリック
(3)ネクスガード
それぞれ特徴やメリットが違いますので、薬の特徴について知ったうえで用法・容量を守って使用しましょう。
(1)フロントラインプラス
フロントラインプラスは、スポットタイプと呼ばれる薬剤の名称で、薬剤をペットの首筋部分(肩甲骨の間)に塗布することで予防できる薬です。
【対象寄生虫】ノミ・マダニ・シラミ
【使用頻度】1度の使用で、ノミに対しては1~3カ月・マダニには1カ月間予防効果あり
【特徴】ノミ・マダニの駆除以外にも、すでに皮膚にくっついている寄生虫も卵の孵化も阻害してくれます。
【フロントラインプラスの詳細】
(2)フロントライン ジェネリック(プロテクトプラス)
フロントラインジェネリック(プロテクトプラス)は、フロントラインプラスと同じ薬剤を使用したジェネリック商品になります。
使用方法や効果はほぼ同じとなりますが、主にネットでの販売となります。
販売価格はフロントラインプラスのおよそ半値位で購入できますので、
・インターネットでの購入に抵抗が無い方
・ジェネリック薬品に抵抗がない場合
にはおススメになります。
過去にフロントラインプラスを使用したことがある方は一度ジェネリックも試してみてもいいかもしれませんね(*^-^*)
(3)ネクスガード
ネクスガードは前に紹介したフロントラインプラスとは違い、チュアブルタイプと呼ばれるおやつタイプの予防薬になります。
フロントラインプラスも薬剤を使用後24時間以降であれば、シャンプーを行っても薬剤の効果は持続するといわれておりますが、チュアブルタイプであれば特に気にすることなく使用することが出来ます。
価格は高めになりますが、本来なら別途必要となるフィラリアの予防も一緒にオールインワンで出来るので、寄生虫の予防が億劫に感じる飼い主さんにはかなり便利な予防方法になると思います。
コチラの予防薬は動物病院で処方されますので、マダニなどの寄生虫とフィラリアの予防を一緒にしたい場合にはかかりつけの動物病院に相談してみてはどうでしょうか?
【対象寄生虫】ノミ・マダニ・フィラリア・犬回虫
【使用頻度】1度の使用で、ノミ・マダニに1カ月間予防効果あり
【特徴】ノミ・マダニの駆除以外にも、フィラリアや犬回虫など体内の寄生虫にも効果がある
【ネクスガードの詳細】
2.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症状
【病原体】
ブニヤウイルス科フレボウイルス属の重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome : SFTS)ウイルス
【感染経路】
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルスを保有したマダニに噛まれることで感染します。
【潜伏期間】
6~14日間
【臨床症状】
発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主張とし、ときに、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴う。
血液所見では、血小板減少(10万/㎣未満)、白血球減少(4000/㎣未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。致死率は10~30%程度である。
2-1.マダニに噛まれたら
SFTSは6~14日の潜伏期間を経て症状が現れます。
もしマダニに噛まれたら医療機関に行きマダニを除去してもらってください。
専用のピンセットで取ることも出来ますが、取り方を失敗すると感染症を引き起こす可能性があるので医療機関で除去してもらうのがおススメです!
マダニに噛まれた後に発熱した場合には、早急に医療機関にかかり、マダニに噛まれたことを伝えて診療を受けると理想です。
悪化すると命にかかわる可能性もありますので早めに医療機関を受診し、体力を落とさないように無理して学校や職場に行かないようにして、しっかり休みましょう!
2-2.周りに感染させないためにすること
マダニに感染したペットとの接触を気を付ける
ペットがSFTSに感染した後に、感染したペットに噛まれたり、舐められることでSFTSが感染する可能性が高いという報告があります。
体液以外にも尿や糞便からもウイルスが観測されているので、排泄物の処理にも気を付けなくてはいけません。
体調が悪いペットのケアをするときは、ゴム手袋などをつけて手洗いの徹底や、エプロンの装着、ペットの身の回りの道具をしっかり洗浄するように気を付けましょう。
SFTSと診断されたら
もしもSFTSと診断されたらマスクをして、他の人との過度な接触は控えましょう。
また人から人に感染するときは体液による直接的な感染が認められたので、唾液や嘔吐・下痢の処理に気を付けて処理をしましょう。
特に尿・血液による感染リスクが高いと言われているので、出血した際は周りを汚さないように気を付け、血液が付着した布製品は薄めたハイター液に付けて洗濯するようにしましょう。
3.マダニが引き起こす感染症
マダニが引き起こす感染症はSFTSだけではありません。
主な症状を知っておくことで、早めの処置が可能なので少し紹介いたします。
3-1.ダニ媒介脳炎
ヨーロッパ亜型
ヨーロッパ亜型による感染では、そのほとんどが二相性の経過をたどります。
第一相では発熱、頭痛、眼窩痛、全身の関節痛や筋肉痛が1週間程度続き、解熱後2から7日間は症状が消え、その後第二相には、痙攣、眩暈、知覚異常、麻痺(まひ)などの中枢神経系症状を呈します。致死率は1~2%、回復しても神経学的後遺症が10~20%にみられるといわれています。
極東亜型
極東亜型による感染では、ヨーロッパ亜型のような二相性の病状は呈しませんが、極東亜型に感染した場合、徐々に発症し、頭痛、発熱、悪心、嘔吐が見られ、さらに悪化すると精神錯乱、昏睡(こんすい)、痙攣および麻痺などの脳炎症状が出現することもあります。致死率は20%以上、生存者の30~40%に神経学的後遺症がみられるといわれています。
シベリア亜型
シベリア亜型に感染した場合も徐々に発症しますが、その経過は極東亜型と比較して軽度であり、脳炎を発症しても麻痺を呈することはまれです。その致死率は6~8%を超えることはないと報告されています。しかしながらシベリア亜型と進行型慢性ダニ媒介脳炎との関連が示唆されており、進行性慢性ダニ媒介脳炎では1年を超える長期の潜伏期間あるいは臨床経過をたどります。
3-2.日本紅斑熱
感染すると、頭痛、発熱、倦怠感を伴うことがあります。発熱、発疹、刺し口が主要三徴候で、ほとんどの症例にみられます。
つつが虫病との臨床的な鑑別が困難です。
※ただし、詳細に観察すると、
・発疹が体幹部より四肢末端部に比較的強く出現する(つつが虫病では主に体幹部にみられる)
・つつが虫病に比べ、刺し口の中心の痂皮(かさぶた)部分が小さい
などの特徴があります。
検査所見では、CRP(炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するたんぱく質)の上昇、肝酵素(AST、ALT)の上昇、血小板の減少などがみられます
3-3.つつが虫病
全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症します。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達します。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多く、刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹します。不定型の発疹が出現しますが、発疹は顔面、体幹に多く四肢(手足)には少ないです。テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられますが、重症になると肺炎や脳炎症状を来します。北海道を除く全国で発生がみられています。
3-4.ライム病
・感染初期(stageI)は、咬まれた部分を中心とする限局性の特徴的な遊走性紅斑が現れることが多く、随伴症状として、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うこともあります。紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑または均一性紅斑がほとんどです。
・播種期(stageII)には、体内循環を介して病原体が全身性に拡散し、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られます。
・感染後期(stageIII)は、感染から数か月ないし数年を要します。播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれています。日本では、感染後期に移行したとみられる症例は現在のところ報告されていません。症状としては、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎などがあげられています。
4.まとめ
マダニは様々な感染症を引き起こす可能性はあるものの、予防することでそのリスクを回避することが可能です。
マダニの予防方法としては
≪マダニの予防方法≫
- 犬・猫を草むらに入れない
- マダニの予防接種を行う
- 人間も草むらを歩かない
- 草むらで作業するときは長靴・長ズボンを着用する
- ズボンや靴にダニの忌避剤を使用するとなお良い
以上の5つが重要です。
また、ペットから飼い主への感染のリスクもあるので、特にペットのマダニ対策は必須事項になります。
予防薬は大変優秀で、予防薬を使用することでノミ・マダニなどの寄生虫をほぼ100%予防することが出来るので、ペットと一緒にお散歩やお出かけする際は予防を心がけましょう!
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